同人社の専門書情報 発信・交換サイト「ヘルス&メンタルヘルス」
Dojinsha Co.,Ltd [ Health & Mental Health ]
「少年事件 おとなは何ができるか」について
■ 「少年事件 おとなは何ができるか」のご紹介
少年事件 おとなは何ができるか
著者:山崎晃資 石橋昭良 朝倉喬司 神谷信行 竹花豊 松田文雄 07月10日発売 定価:本体価格1800円+消費税 |
少年事件 のご紹介
アキハバラは、バスジャックはなぜ起きたか。 深刻化する少年・少女事件、非行の実態と背景を精神医学、 心理学、法律、警察、ジャーナリズムの専門家が分析し、 おとなは何ができるかを提言。 もう、他人ごとではない。親、教師、児童ソーシャルワーカー、 カウンセラー、警察、行政 その他関係者必読 |
「少年事件」の書評から
*金剛出版 雑誌「精神療法」書評に取り上げていただきました。
以下に転載いたします。 金剛出版「精神療法第35巻第3号 2009年6月」の書評より 村松 励先生 本書のタイトルは、少年犯罪でも少年非行でもなく、少年事件である。その理由は本書を読み進めるうちに納得した。それは、少年の犯罪や非行を社会現象や個人の病理として高みから論じたものではないことである。事件は、解決を求められる。再発の防止が求められる。それがサブタイトルに繋がる。解決のため、予防のために「おとなは何ができるか」といった自問自答を読者にも迫るものである。 本書は、6名の講演記録を元に、大幅な加筆・訂正がなされて完成したと「まえがき」に述べられているが、6名の著者たちの専門分野がそれぞれ異なっていることが本書を魅力あるものにしている。それぞれが言いっ放しではなく どこかでお互いが深く結び付いているといった安心感を抱かせる。それは、6人のおとなが少年事件の解決・予防のために何ができるかをそれぞれの立場から真摯に論じているからであり、著者の一人である松田文雄の言う「熱い少年のこころ」をどこかで持っているからではなかろうか。 評者にとっては、各章に思わず深く頷くこぼれ話や臨床上のヒントが沢山あり、それぞれに印をしながら読み進んだ。そのうちの幾つかを章を追って紹介したい。第1章では、編著者が少年Aの鑑定について検討会で、鑑定医に対して「汎用性発達障害を疑ったことはなかったでしょうか」といった質問に「鑑定の際には特に調べていなかった」といったくだりである。また、「性的興奮時のイメージ」に関する議論も興味深い。第2章では、石橋昭良氏のきめの細かいデータの解説が、議論を抽象化させない役割をとっている点で重要である。第3章では、朝倉喬司氏がA少年の育った「風景」に「何かが欠けている」と感じ、その欠けているものが「川」であることを閃くといったくだりである。「風景構成法」を連想させて興味深い。第4章では、神谷信行氏は現代の「悲しむ力」の衰退を指摘し、加害者の人間存在そのものにはらんでいる「悲」(呻き)が了解され、憎悪や恨みが「悲しみ」に変容することの重要性の指摘が本質を突いている。第5章では、竹花豊氏が広島県警本部長時代に暴走族に送ったメッセージ、 これはまさに「何ができるか」を具現したものであり、「広島での教訓というのは、個別のカウンセリングに加えて、社会的なカウンセリングに視点を持つということです」といった実践からの報告は共感を呼ぶ。第6章では、松田文雄氏が広島で実践している「少年司法と思春期精神医療の対話」懇談会の紹介がなされている。ネットワーク作りの際に、共通言語の必要性を痛感しているくだりは、まさに同感である。 おとな一人ひとりが少年事件の解決・予防に向けて、どのようなことができるのかを考えるきっかけ作りの一つとして、多くの方にお薦めしたい著書である。 (専修大学ネットワーク情報学部) 村松 励 山崎晃資編著 同入社、A5判232頁、1,800円+税、2008年7月刊*医学書院 雑誌「精神医学」書評に取り上げていただきました。以下に転載いたします。 医学書院「精神医学 51巻・1号 2009年1月」の書評より 飯森眞喜雄先生 日常臨床において、たいていの精神科医は「少年」と聞くと腰が引けるだろう。「事件」だと逃げ出したくなる。できたら避けたいし、診ないですませたい。「少年Jも「事件」も得体が知れないからだ。ましてやオジサン精神科医には理解できないことばかりである。今の少年たちがどんな息遣いをし、何を感じているのかが肌身にピンとこないのだ。なんとか共感しようにも、その足がかりとなる自分の少年時代のこころは彼方にある。だから近寄りがたい。いかに把握し、 どう対応し、どのように治療していったらいいか見当がつかないのだ。精神科医は自分が生きている時代の空気から逃れることができないが、 さりとて変質する空気に合わせて呼吸法を変えていくのも難しい。 さて、そこで『少年事件』である。「少年」に加えて「事件」までくっついている。評者も本書を開くまでは気が重かった。だが、読み終えた後は一変してしまった。題名はセンセーショナルで氾濫するマスコミ本のようでもあるが、中身は濃い。ところが、読後はこころの持ちようが軽くなるのである。そして、「さぁ、今度の休みには渋谷の街にでも出かけてみようか」という気を起こさせてくれる。 本書は2006年12月2日と3日、明治安田こころの健康財団が主催した児童思春期講座「少年事件の予防と対応―現代の青少年をどのように理解するか―」でなされた、関連分野6名の専門家(精神科医で目白大学教授の山崎晃資氏、元警視庁少年育成課副参事の石橋昭良氏、 ノンフィクションライターの朝倉喬司氏、弁護士の神谷信行氏、元警察庁生活安全局長の竹花豊氏、精神科医で松田病院理事長の松田文雄氏)の講演に加筆してできあがったものである。それぞれの立場から、マスコミ報道で作り上げられた話題性先行の少年事件のイメージに左右されず、今の社会の空気を吸ったり吐いたりしている少年たちの息遣いとこころの襞のありようが客観的データと実体験とを交えつつ多面的に語られている。読者は読み始めるや、一気に最後のページにまでいくだろう。 まず、編集された山崎氏による、精神医学的問題から社会現況全般にわたる俯瞰的でありながら微に入り細を穿つ巧みな導入があり、そこからそれぞれの畑の人たちによる生き生きとした語りが続く。普通、精神科医の編集した本ではこれほど多くの畑は視野に入らない。精神科医はよその畑の人の話を聞かない傾向があるからである。しかし、 こと少年とその事件においては逆である。少年たちが育ち生きている畑のことを知らずして理解のしようがないのだ。「畑のことは農夫に聞け」である。 そうした姿勢で編まれた本書は、山崎氏の導入をお読みになった後なら、どこから入っても勉強になるだろう。それほど内容が濃い。まさにサブタイトルに添えられた「深刻化する実態とその背景を理解し、おとなが何ができるかを考える」にふさわしい。どの章を開いても評者がもっとも感銘を受けたのは、複雑怪奇ともいえる現況の中でたまたま事件を起こさずにすんだ少年たちの姿までもが浮き彫りになっているくだりであった。 精神科医や心理士は無論のこと、一般家庭の父親や母親、教育関係者、警察関係者など、どの立場の人が読んでも得るものがあると思われる。読後、渋谷の街に出れば、少年たちをただ遠巻きに見ているのではない自分に気づき、その息遣いと肌触りが今までとは違って感じられるかもしれない。やがてその体験は、少年のこころと出会える可能性を開いていってくれるだろう。本書は、あるようでなかった、待望の、そんな本である。 飯森眞喜雄 (東京医科大学精神医学講座) A5 230頁 2008 定価 1,890円(本体1,800+税)同人社*「日本教育新聞」2月16日書評に取り上げていただきました。 児童文学者の鈴木喜代春先生の評です。 |
少年事件 愛読者カードから
さまざまな家庭の事情により、息子は心に深いキズを負いました。 いかに彼によりそい、彼のキズを治し、いかに世間の冷たい仕打ちから彼を守るかが、 私の永年の課題でした。 先日の秋葉原事件を見て、我が子も他の方のお子様たち、日本の中の子供たちに異変が起きているのがわかっても、 永い間、その心の病理の原因がわからないでおりました。 御社の御本は大変すばらしく、全ての疑問が解けました。 数冊購入し、Drや教育関係の友人にも贈らせて戴きました。 これからも、このシンポジウムの内容を刊行されてくださいませ。ありがとうございました。(愛読者) |